
フルート・ピッコロ Flute/Piccolo
修理・調整の解説と料金
1.メンテナンス・定期調整maintenance
定期調整の勧め:フルート・ピッコロは大変デリケートな楽器なので定期的なメンテナンスとしてバランス調整・全体調整が必要です(木管共通事項)
他の木管楽器よりもキーの力が僅かなので、少しの息漏れ(タンポ変形)が演奏に影響します。
タンポ隙のチェックには主に下の写真のリークライトを使用し、フィラーゲージは最終確認時とピッコロで使用します。
タンポ調整:バランス調整、全体調整、タンポ交換時の中で行う基本調整です。
カップとタンポの間に厚さと大きさが異なる調整紙を挟んでタンポと音孔の隙間を無くす、フルートの重要で手間と時間の掛る、木管楽器中最も難しい調整です。
又、C及びトリルキーやピッコロのタンポはクラリネットの項1.と同様です。
料金:以下の調整代に含む
バランス調整:タンポ調整(該当する箇所)+コルク・フェルト調整(必要により交換)です。
複数のキーが同時に無理なく閉じる為の作業を指し、其々のタンポに変形が無い(息漏れしない)状態、又は該当するキーのタンポ調整を行った上で、ネジ・コルク・フェルトによる部分調整です。
料金:1,100円~
全体調整:全タンポ調整+バランス調整です。
主に半年以上無調整のフルート・ピッコロのキー全てを分解し、全てのタンポ調整を行った後、上記のバランス調整で楽器の状態を整える全分解調整です。
料金:6,600円~



中:タンポ隙チェック
下:タンポと調整紙
2.コルク・フェルト・タンポpad
コルク・フェルト:単にクッションの役目だけでなく、キーのバランスとタンポの開き量(ピッチ)に重要な役割を担っています。
これらがきちんとしていないと音が出難くなり、音程が取れない等、演奏そのものに支障となります。
使用個所により種類を使い分け、適切な加工・取り付けと調整がストレスの無い演奏を可能にします。
料金:コルク(天然/ハイコテックス)・フェルト・他各種素材等 交換1箇所1,500円(加工・調整込)
タンポ:フルートでは写真の様に皮(ブラダ-/スキン)が破れていたり、音孔との溝が深過ぎる場合(水分の吸収と乾燥を繰り返し、タンポ内部のフェルトの復元力が無くなっている状態)は交換が必要になります。
ピッコロはクラリネットの項3.と同じです。
交換作業は「単純な取り替え」ではなく、取り付け技術とその後の調整がとても重要で、息漏れ・タッチ感に影響します。
料金:スキンタンポ交換1箇所1,500円(タンポ調整込)

3.全タンポ交換・オーバーホールoverhaul
全タンポ交換:消耗品の全交換と調整で「フルート・ピッコロを再生する為の標準的な全体修理」です。
内容は管体洗浄+タンポ・コルク・フェルトの全交換+全体調整+バネ強度再調整+グリスアップです。
料金はメーカー(モデル)とタンポ(グレード)の組み合わせで決まります。
料金:フルート50,000円~ ピッコロ45,000円~
オーバーホール:外部ダメージの修復と機能の完全回復を図る「全タンポ交換+必要な修理」です。
必要な修理には、外部ダメージとして管体の凹み・曲がりの他、機能的な問題のキーのガタつき・バネ破損・半田外れ・ノックピン交換・etc.が挙げられます。
当工房ではオーバーホールをこのように定義し、内容は各々の楽器の程度・状態が異なるので実際に拝見し、遠方の方は写真・メール・お電話で、ご予算等と合わせて総合的に判断してお見積り致します。
一例として8.修理実例をご参考にして下さい。
料金:フルート55,000円~ ピッコロ50,000円~
4.ヘッドコルクhead-cork
交換の勧め:購入(交換)後2年以上経過し、且つ写真の様にクリーニングロッドを頭部管に差し込み、その切り込み線(反射板位置を計る目印)が唄口の中心からキャップ方向にずれている場合はコルクが縮んで(痩せて)います。
この部分に少しでも隙間があると最高・最低音に影響が出ます。
料金:1,500円


下:痩せた状態のヘッドコルク
5.ジョイントjoint
修理・調整の勧め:組立て時に斜めに入れたり、強くこじって出し入れする等、取り扱いが不適切な場合はジョイントが歪み・凹みで緩んできます。
緩みが大きいと息漏れや位置ズレ・脱落が起こり、演奏に支障を来たすので修理が必要になります。
又、逆に差し込みがきつい場合は無理な力で楽器を傷めます。
料金:足部管嵌合調整1,500円~ 頭部管ラッピング1,500円~ 凹直し等修理は別途


6.キーkey
修理の勧め:クラリネットの項6.と同様です。
修理後にタンポ調整・バランス調整(コルク・フェルト交換)等が必要になる場合があります。
料金:曲がり修正1,500円~ ロー付け修理3,300円~
7.管体body
修理の勧め:フルートの管体の凹は金管共通事項と修理実例(頭部管)を参照して下さい。
ピッコロの木部の割れはクラリネットの項5.と同様です。
料金:凹直し2,200円~ 半田・ロー付け3,300円~
8.修理実例repair-example
管体は凹みの他、硫化により完全に変色し、タンポ・フェルト等の消耗品は全て劣化した状態で演奏は不可能でした。
然し、銀の硫化は金属の腐食を防ぐ一種の保護膜の役割を持っている為、丁寧に除去と磨きを行った地道なオーバーホールにより、このように以前の輝きと音色を奏でることが出来ました。
学生時代に愛用したフルート・ピッコロも同様に蘇ります(例.Muramatu・Sankyo・Altus・Hammig・Yamaha)
修理内容~全タンポ交換+頭部管凹直し+芯金固着修理+硫化除去・手磨き
上:修理前 下:修理後 サムネイルをクリックすると詳細がご覧頂けます。
∗バフ掛けと再メッキは行っておりません。
Yamaha YFL-894





